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市町村暴力団排除条例の早期制定を求める会長声明
1 声明の趣旨
石川県内19市町のうち暴力団排除条例が制定されていない18市町において,速やかに同条例を制定するように求める。
2 声明の理由
(1)暴力団は,その団体の構成員である暴力団員が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体であって(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条2号),その共通した性格は,その威力を利用して暴力団員に資金獲得活動を行わせて利益の獲得を追求するところにある。
暴力団が市民生活や企業・行政活動に触手を伸ばすようになって久しく,全国的には財団法人日本相撲協会の暴力団関係者による維持員席観戦問題や芸能界において暴力団関係者との交際などが発覚し,芸能人が引退を余儀なくされたという事件も記憶に新しいところである。かかる暴力団の跋扈は対岸の火事ではなく,石川県内においても暴力団員による不当要求事件が後を絶たず,暴力団は市民生活や企業・行政活動に対する重大な脅威となっている。
(2)暴力団が,違法に獲得した経済的利益を次の収益増殖のための活動資金として用いることで組織の維持拡大を図る以上,市民生活の安全と平穏の確保を図り,もって市民の自由と権利を保護するためには,その違法な資金獲得活動を規制することにより暴力団を弱体化させることが何より求められるところである。
(3)当会も,平成15年に石川県警察及び公益財団法人石川県暴力追放運動推進センターと民事介入暴力事案等に対する連携についての協定(民暴三者協定)を結び,この協定に基づき,これまで,暴力団員による不当要求への対応,暴力団事務所の明け渡し等の暴力団排除活動を支援してきた。
(4)現在,暴力団排除の動きは全国的に広がっており,全都道府県で暴力団排除条例が制定され,石川県においても平成23年8月1日から石川県暴力団排除条例(以下「県条例」という。)が施行されるに至っている。
県条例では,暴力団事務所の新設の禁止,青少年の暴力団事務所への立ち入らせの禁止,暴力団への利益供与等の禁止及び県の公共工事等全ての契約からの暴力団やその共生者(暴力団に資金を提供するなどして,暴力団の資金獲得活動に協力し,又は関与する個人やグループで,表面的には暴力団との関係を隠しながら,その裏で暴力団の威力,資金力等を利用することによって自らの利益拡大を図る者)の排除,観光施設などの特定事業者や祭礼等からの暴力団排除等,資金獲得活動対策が整備されている。
(5)しかしながら,現状において県条例の制定だけでは,市町職員等への不当な要求に対する措置,市町の契約事務における暴力団排除,給付金の受給等における暴力団排除及び公の施設における暴力団排除を全うすることができない。このような現状に照らし,暴力団の資金獲得活動を規制し,暴力団組織の弱体化を図るためには県条例の制定のみならず,石川県内19市町の全てにおいて暴力団排除条例が制定される必要がある。
また,暴力団排除対策は,社会全体で取り組むことで効果を発揮するものであり,県内の全ての市町が連携して対策を講じる必要もある。すなわち,ひとつの自治体でも市町条例が整備されないと,当該市町に間隙を縫って暴力団やその共生者が公共事業に参入して資金獲得活動を行うことを許容することになるのであって,市町条例が効果を発揮するためには,県内全ての市町の足並みをそろえることが不可欠なのである。
(6)現在,暴力団排除条例が制定された市町は穴水町のみであり,議会上程中又はそのことが計画されている市町は金沢市,加賀市,羽咋市,かほく市,津幡町,内灘町,宝達志水町の7市町に過ぎない。
(7)石川県内における市民生活の安全と平穏の確保を図り,もって市民の自由と権利を保護するために,県条例が既に施行されたこの時期に機を逸することなく,石川県内19市町の全てにおいて暴力団排除条例を制定するべきである。
平成24年2月24日金沢弁護士会
会長 智口 成市