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特定秘密の保護に関する法律の廃止を求める会長声明
特定秘密の保護に関する法律の廃止を求める会長声明
(趣旨)
当会は,本日施行された特定秘密の保護に関する法律の廃止を求める。
(理由)
1 法律の施行
特定秘密の保護に関する法律(以下「特定秘密保護法」という。)は,2013年(平成25年)12月6日に成立し,2014年(平成26年)10月14日には,特定秘密保護法施行令(以下「施行令」という。)及び特定秘密の指定及びその解除並びに適正評価の実施に関し統一的な運用を図るための基準(以下「運用基準」という。)が閣議決定され,本日施行日を迎えた。
2 知る権利や報道の自由を侵害するおそれがある
しかし,特定秘密保護法の内容及び施行の経緯には,以下に述べるとおり様々な問題点がある。
まず,そもそも政府が保有する情報は,本来,私たち主権者である国民の財産でもあり,その一部を「特定秘密」に指定し私たちに知り得ないものにできるということは,私たちの知る権利や報道の自由を侵害するものである。
また,運用基準においても,「特定秘密」指定の要件該当性に関して極めて不明確な判断基準を示した上で,「特定秘密として保護すべき情報を漏れなく指定すること」を遵守事項として掲げている。これでは,不明確な基準のもと,「特定秘密」指定に積極的な方向に厳格性が追求され,結果「特定秘密」に指定される範囲が不当に拡大されることは明らかであり,到底認められるものではない。
3 国民主権主義に反する
次に,特定秘密保護法が「特定秘密」を最終的に公開するための確実な法制度を設けておらず,「特定秘密」を国会へ提供するか否かの最終的な判断を政府が行うこととしている点は,国民主権原理に反するものである。
また,特定秘密保護法の抱える問題点は成立当初から縷々指摘されていたものではあるが,情報保全諮問会議が作成した施行令,運用基準の素案に対して,2万3820件ものパブリックコメントが寄せされたことからも,国民的コンセンサスがいまだ十分に形成されていないことは明らかである。それにもかかわらず,同素案はほとんど変更されることなく閣議決定され,その抱える問題点が何ら解消されないまま多くの国民の声を無視して,本日施行されてしまった。この1点を見ても,国民主権原理に反する特定秘密保護法の内実が反映されているといわざるを得ない。
4 重大な情報の秘密指定が集団的自衛権行使と結びつき恒久平和主義破壊となる危険性が極めて大きい
さらに,特定秘密保護法は,以下のとおり,集団的自衛権との関係においても深刻な問題を抱えている。
運用基準によれば,「特定秘密」と指定される情報には,「外国の政府等との交渉又は協力の方針又は内容のうち,(a)国民の生命及び身体の保護,(b)領域の保全,…(d)国際社会の平和と安全の確保(我が国及び国民の安全に重大な影響を与えるものに限る。)もの」が含まれている。これらの情報は,2014年(平成26年)7月1日の閣議決定において示された集団的自衛権行使の要件該当性(「我が国の存立が脅かされ,国民の生命,自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」)を判断する上で必要不可欠な情報である。
集団的自衛権行使は,そもそも憲法第9条の解釈上認められないのであり,限定的な行使容認ですら本来許されるものではないが,特定秘密保護法によって,限定要件該当性の判断過程が私たち国民にとって不透明なものとなれば,集団的自衛権行使に対する歯止めが効かなくなり,恒久平和主義が破壊される危険性が極めて大きくなる。
5 むすび
よって,当会は,このような問題を多く抱えている特定秘密保護法を一刻も早く廃止することを強く求める次第である。
2014年(平成26年)12月10日
金沢弁護士会 会長 飯 森 和 彦