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低賃金労働者の生活を支え,地域経済を活性化させるために最低賃金額の引上げと中小企業の支援強化を求める会長声明
低賃金労働者の生活を支え,地域経済を活性化させるために最低賃金額の引上げと中小企業の支援強化を求める会長声明
1 最低賃金額の引上げ
厚生労働大臣は,近いうちに,中央最低賃金審議会に対し,2020年度地域別最低賃金額改定の目安についての諮問を行い,同審議会から,答申が行われる見込みである。
昨年,同審議会は,全国加重平均27円の引上げ(全国加重平均額901円)を答申し,これに基づき,石川県では地方最低賃金審議会において最低賃金額が832円に決定された(2018年度から26円の引上げ)。時給832円という水準は,1日8時間,週40時間働いたとしても,月収約14万5000円,年収約174万円にしかならない。
今般,政府の緊急事態宣言により,経営基盤が脆弱な多くの中小企業が倒産,廃業に追い込まれる懸念も広がる中,最低賃金の引上げが企業経営に与える影響を重視して引上げを抑制すべきという議論もある。
しかし,労働者の生活を守り,新型コロナウイルス感染症に向き合いながら経済を活性化させるためにも,最低賃金額の引上げを後退させてはならない。多くの非正規雇用労働者をはじめとする最低賃金付近の低賃金労働を強いられている労働者は,もともと日々生活するだけで精一杯で,緊急事態に対応するための十分な貯蓄をすることができていない。
また,今般の緊急事態下において,小売店の店員,運送配達員,福祉・介護サービス従事者等の社会全体のライフラインを支える労働者の中には,最低賃金付近の低賃金で働く労働者が多数存在する。これらの労働者の労働に報い,その生活を支え,社会全体のライフラインを維持していくためにも最低賃金の引上げは必要である。
2 中小企業の支援強化
一方、最低賃金の引上げによって,特に中小企業の受ける影響は小さくないことも考えられる。受ける影響の大きさによっては,解雇や雇止めといった雇用が失われる事態が発生し,企業のみならず労働者にとっても影響が生じる可能性もある。
この点に関しては,政府が現在実施されている新型コロナウイルス感染拡大に対応した各種支援策に加えて,さらに長期的継続的に中小企業支援策を強化することで対応すべきである。具体的には,社会保険料の減免や減税,補助金支給等の中小企業支援策によって,中小企業が最低賃金の引上げによって影響を受けることなく事業を継続できるよう検討を進めるべきである。
新型コロナウイルスの感染拡大を,最低賃金を引き上げない理由とするべきではなく,労働者・使用者のいずれもがこの事態を乗り越えることができるよう,最低賃金の引上げとの言わば車の両輪として,中小企業の支援を強化する施策の実施こそが求められているのである。
3 結論
これまでに述べたことから,当会は,全国及び石川県において最低賃金額の引上げを図り,地域経済の健全な発展を促すために,本年度,中央最低賃金審議会が最低賃金の引上げを答申し,さらに石川県の最低賃金審議会において最低賃金の引上げを決定することを求めるとともに,政府による中小企業に対する各種支援策のより一層の強化を求めるものである。
2020年(令和2年)6月29日
金沢弁護士会
会長 宮西 香