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法曹人口問題に関する会長声明
1.法曹人口の増加
政府は,2002年3月,司法制度改革推進計画を閣議決定して,司法試験合格者数の大幅な増加に着手した。2001年に990名であった司法試験合格者数は,上記閣議決定に基づき,2007年には2099名,2008年には2209名へと増加した。
ところが,裁判官や検察官の増加が殆ど見られず,実際には,弁護士の人数のみが大幅に増加する結果となった。2000年には1万7126名であった弁護士会員数は,2009年2月1日現在,2万6976名と激増した。
2.増員を支える基盤の不存在
しかしながら,新しい法曹養成制度が未だ整備途中にあり,司法の基盤整備が遅れている状況下にあって,法曹人口の増加が先行していることにより,新規法曹が就職できない問題や法曹としての質についての懸念が生じている。
質が伴わない弁護活動により,依頼者の利益が害されることはもちろん,過度な自由競争により弁護士自身の利益確保を第一とする弁護活動と結びつく場合、社会秩序の混乱を招く結果となる。
法曹養成制度が十分に整備された状況下で,質の確保された法曹が,裁判官・検察官・弁護士にバランスよく配置されることによって,国民の利益が守られる次第である。
3.急激に法曹人口を増加すべき必要性・緊急性がないこと
弁護士人口が急増したにもかかわらず,平成19年度司法統計によれば裁判所に係属する民事事件,刑事事件の事件数は減少傾向にある。
弁護士過疎の問題については,公設事務所の設置,司法支援センターの事業の一つとして司法過疎地域への事務所の設置が進み,昨年ゼロ地域(弁護士がいない地域)は解消した。
このような状況下において,法曹の質の確保を犠牲にしてまで法曹人口を急激に増加すべき必要性・緊急性があるとは言い難い。
4.結論
よって,当会は,政府に対し,司法試験合格者数を3000人程度とする方針を見直し,適正な法曹人口政策をとるよう求めるものである。
2009(平成21)年2月27日
金沢弁護士会
会長 西 徹 夫