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集団的消費者被害回復に係る訴訟制度の早期創設を求める会長声明
本年8月に消費者庁は「集団的消費者被害回復に係る訴訟制度案」(以下、「制度案」という。)を公表した。
このような基本的枠組みの訴訟制度は,今日まで多くの消費者を巻き込んだ消費者被害事件の発生は後を絶たず,2010年度の全国の消費生活相談の件数は約89万件(石川県における消費生活相談は約4400件)と,依然として高い水準が続いていること,しかし,現在の訴訟制度を利用して被害回復を図るためには,相応の時間や費用・労力を要するため,事業者に比べて情報力・交渉力・資力で劣る消費者は,被害回復のための行動を起こすことが困難という状況があること等を踏まえると,画期的な制度である。
もっとも,この「制度案」は2011年12月に消費者庁が公表した「集団的消費者被害回復に係る訴訟制度の骨子」よりも対象事案が限定される等の問題点もある。これまで存在しなかった画期的な制度を実効性あるものとして機能させ,これまで救済に困難のあった消費者被害の救済を現実のものとするには,少なくとも以下の点についての見直しを行ったうえで,このような基本的枠組みの制度の早期実現を強く求めるものである。
1 手続の遂行主体については特定適格消費者団体以外の弁護団等にも拡大していくことを検討するべきである。
2 個人情報流出事案,有価証券報告書虚偽記載等の事案,製品の安全性を欠く事案,虚偽・誇大な広告・表示に関する事案も対象とするべきである。
3 消費者契約の目的となるものについて生じた損害又は消費者契約の目的となるものの対価に関する損害以外の損害も対象とするべきである。
4 役員等事業者自体以外の者の責任を追及する事案も対象とするべきである。
5 簡易確定手続における通知・公告費用は原則的に相手方の負担とするべきである。
6 制度を担う特定適格消費者団体に対して国は財政面も含めた支援を実施するべきである。
以上
平成24年10月22日
金沢弁護士会会長 奥 村 回